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  • Moe Fujisue

RT #01:ものづくりメディアとしての場所 <後編>

更新日:2018年12月19日



2019年春にオープン予定の大森町~梅屋敷駅間高架下“ものづくり複合施設”の敷地・高架下にて、「RT #01:ものづくりメディアとしての場所」と題して開催された今回のラウンドテーブル。前編はこちらから。


4人のゲストプレゼンテーションを終えたあとは@カマタの連さんを交えてのディスカッションへ。

これまでずっと、どうやったら魅力的なエリアを中長期的に作っていけるのかを議論してきたという京急+@カマタの合同チーム。施設が完成する前からラウンドテーブルを開催していくことで、その可能性をよりオープンに考える場をつくろうと取り組んでいます。

さて今回は、4名の多彩なゲストとともにどんな議論が生まれたのでしょうか。


<KEYWORDS>

  • 「受注関係ではない」関係性

  • 可視化されていない情報

  • インターフェイスから答えを見つける

  • 共同体の中で等価交換されているものは

  • ストーリーに貢献することと仲介できる人

  • 現状維持って基本衰退


 

大田区だけではなく、従来の工業の世界は「大企業が発注・工場が受注」の関係をもとに発展してきました。そこにデジタル機材の発達やDIYカルチャーの浸透によって、新たなものづくりのあり方を探求しようというのが今回の高架下のプロジェクト。

「2つの随分離れているように見える関係性が、一体どんな風につながっていくのかが気になる」という若林さんの投げかけから議論は始まりました。



スモールビジネスや個人事業といった個人の制作でも「必ずものをつくりたい、という思いがあれば1個でも100個でも仕事になると思います。」と応答する関さん。近年の工作機械技術の躍進は目覚ましいものがあり、職人のなり手が減る中でも、機械化とIT化によってより少ない人手で対応することが可能になってきているそうです。しかしながら、「機械が助けてくれる」という感覚はあってもやはり、熟練の職人さんの手を介さないと仕上げられないことは多くあり、完全な機械化は難しいというのが関さんの肌感覚だそう。


「受注関係ではない」関係性

その中で、若林さんからは「受注関係ではない」場合の2つの視点が示されました。ひとつは一個人が事業・企画・制作すべての主体となるワンマンプレーヤー型。もう一つは色々な企画主体を下支えするプラットフォーム型。

後者は5年前に訪れた諏訪での出来事が思い出されるそうです。精密機器とそれらを運用する技術が集積する諏訪は、話を聞くほどにすごい場所だ、という驚きがある一方で「なぜ海外から仕事を取らないのか?なぜそのための情報がオープンになっていないのか?」という疑問が膨らんだと言います。残念ながら当時、諏訪にどんな技術や工場があるか、という事は一覧するすべがなく、ましてや英語での情報発信は皆無。情報が可視化されていないことで、気軽にアクセスしてみる、ちょっと調べてみる、が起きない状態に大きな機会損失を目の当たりにした気持ちだったそう。


可視化されていない情報

「たとえば島影くんもリストさえあれば、ちょっとこういうの作りたいけれど大田区の工場にできる所ないかな、と調べられる。それがない現状は、とても不便なことになってますよね。」と若林さん。

技術のアーカイブ化・オープンソース化をして裾野の広い相談窓口を作ること。プラットフォーム化することは、このまちに期待を投入して結果というリターンを得るための大きな鍵なのかもしれません。


「可視化(されていない)」というキーワードが出たところで、話題はオンライン上のインターフェイスに移ります。


インターフェイスから答えを見つける

連さんは林さんのプレゼンテーションを引き合いに出しながら、R不動産なら面白い賃貸、Toolboxなら面白い技術・職人・デザインのセレクトショップと見立て、それらを可視化するインターフェイスを林さんは構築してきたのでは、と問いかけました。


インターフェイスの意味とはつまるところ「答えを見つけていく事なのでは」、と話し始めた林さんは、これまでの経験から店頭(ウェブサイト)に並べてみてはじめてわかる事がとにかく沢山あり、価値を感じてきてたと言います。誰が、どれに、どんな興味があるか即座に分かる、つまり販売とマーケティングが同時並行している事の価値。それは、10年・20年の未来予測は無理でも、少し先の未来に向けて布石を打ち続けられる事につながったと話します。


ここ蒲田でも、トイ・ボックスを作りたいと話す林さん。子供から大人まで、関わる人が遊び道具、仕事道具、色々なアイデア等なんでも並べて売ることのできる場所。まずとりあえず並べてみて、売って欲しい・作って欲しいというリクエストががあればササッと作る。それを繰り返していけば、色々な方向の未来を探し当てるプロセスになるのではないか、というアイデアです。「売り場があると、何を売り出そうかなと人は思い出す。そこで面白いアイデアが並んでいると、外から人が面白そうですねとやってくる。」というのが林さんの見立てです。


共同体の中で等価交換されているものは

京急線梅屋敷駅そばの高架下会場

@カマタのメンバーは皆この場所に拠点を持ち、仕事があり、それぞれクリエイティブな活動をしています。連さんは、それらの動きを@カマタという群として見ると、今まで繋がりのなかった人との関係ができたり、各自の領域外とのチャンネルに繋がりやすい、という点でレーベル的だと捉えているそう。


そこで違いが浮かび上がるのが、島影さんの組織体について。OtonGlassの開発と社会実装は、「様々なプロフェッションと協働する総力戦」であると表現しました。ミッションを作り、技術開発し、事業モデルを作り、売り方を考え、ロビーイングや福祉業界との関係構築まで、協働者を見つけながら自分たちで手がけるやり方です。

島影さん曰く、協働している人達は「みんな各領域でもちょっと変わった人達(!?)」なんだそう。「僕と同じ変なバイブスがつながった人たちが、やろう!と言ってくれます。その共同体の中で等価交換されているものはお金だけではなくて。」つまり儲かるかどうかの話をひとまず置いても、学びたい事があったり、変わりたいという気持ちを動力にできる人達が集まっている、というのがOtonGlassチームの組成のようです。ビジョンを共有し、共感を呼ぶことが沢山の人を動かしています。


連 勇太朗さん ―@カマタ / モクチン企画代表理事

ここで、「OtonGlassのようなものづくりストーリーに貢献したい」という会場からの声も飛び出します。


大森工業会のメンバーである質問者からは、これまで精度や納期という指標でやってきた仕事が「ストーリー=付加価値が作れるものづくり」に広がるかもしれない期待と、これまでとは全く異なる製造工程に対する不安が入り交じる質問が。個人対応、つまり小さな個々の対応がたくさん発生しそうなとき、頼む人も作る人も疲弊しないあり方はないだろうか、舵取りをどうやってしていけばいいだろうか、という切実な疑問でした。


アーティストなど他分野の人達と協働した経験を持つ関さんも、「図面さえあれば間違いなく作れるのですが、『なんとなく、こんな感じ』という相談には応えられないんです。寸法・数値がないとものが出来上がらない。」そして、小さなオーダーをしてくれる個々人とのコミュニケーションはしたいけれども、しすぎると普段のお仕事ができなくなってしまう、という悩みも。



そこには、頼みたい人と作れる人を仲介できる、プロデュース・ディレクションを担う人材の必要性が見えてきました。林さんは「知恵も技術的な蓄積も必要な高度な人材で、探して見つける、というのは難しそう。それよりもこの場所でプロダクトを作っている人がそのニーズにも応えて仕事にしていけるようなプロセスを育てるほうが筋が良さそうな気がしました。」


さらに若林さんは、巨匠デザイナーたちの無理難題から1950〜60年代の印刷・製本のイノベーションが起きたことを例に、本当に才能のある人が高みを目指すプレッシャーをかけ、現場や周辺がそれに応えることで技術の進化がなされると話します。「荒唐無稽なビジョンに対して、現場でものをつくる人が面白いと思ってコミットすることが大事だと思います。現状維持って基本衰退ですから。」さらにもう一言、「もしかしたら本当にすごいビジョンというのは、最初は誰にもわからないものかもしれない。杉浦康平(グラフィックデザイナー)もそう。共有できないものだから価値があるという気がしています。」


最後の若林さんのコメントは、懐の深さが試される厳しくも温かい言葉だと感じました。さあ、この場所は、どんな人達が集まるようになるのか。引き続き、注目していきたいと思います。



参加者のみなさんと記念撮影




テキスト:藤末萌、写真:川瀬一絵(ゆかい)

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